2026.9.27
次世代経営者育成講座シリーズ⑦粗利率が2ポイント下がった犯人は誰か?売上データで探す、取引先別・商品別の分析
朝でも昼でもこんばんは。〝次世代経営者育成パートナー〟中小企業診断士の田中 健太郎です。
「親(社長)が子供(後継者)に受けてほしい 次世代経営者育成講座シリーズ 食品卸売業編」の第7回です。今回のテーマは、粗利率の低下の原因探しです。決算書では「下がった」ことまでしかわかりません。「どこで下がったのか」を、会社の中にある売上データで突き止める回です。
※本ブログに登場する会社・人物はすべて架空です。特定の支援先を指すものではありません。
こんな方におすすめ
- 粗利率が下がっているのはわかるが、理由を聞かれるとうまく答えられない
- 販売管理システムは入れているが、請求書を出すことにしか使っていない
- 大口の取引先ほど、うちを支えてくれていると思っている
- 後継者に「数字で原因を探す」力をつけてほしい
前回のおさらい
第6回「銀行に『粗利率はどう変わりましたか』と聞かれたら。後継者のための財務分析」で、みなと食品(仮名)の後継者Kさんは、決算書を2期分並べました。売上は4千万円増えたのに、粗利は1千4百万円減っていた。粗利率は15.0%から13.0%へ、2ポイントの低下です。
そのときKさんは「売上を取りにいった分、どこかで無理をしてますね」と言いました。そして講座の終わりに、こう続けたんです。「どこで無理をしたのか、ちゃんと突き止めたいです。銀行に聞かれたら、そこまで答えたいので」。第7回はここから始まりました。
決算書には「どこで」が書いていない
決算書の粗利は、会社全体をひとつにまとめた数字です。取引先が180社あっても、商品が2千品目あっても、損益計算書では1行になります。
だから決算書をいくら眺めても、粗利率の低下の原因は出てきません。答えは会社の中、毎日の売上の記録にあります。
みなと食品では販売管理システムを使っていました。請求書を出すために、取引先・商品・数量・売上・原価が1件ずつ記録されています。1年分で約6万行。これを2期分、CSVで出してもらいました。データはあるのに請求にしか使われていない。多くの会社で同じです。
最初は180社を並べて、迷子になった
正直にお話しすると、最初のやり方は失敗でした。Excelのピボットテーブルで、取引先180社の粗利率を一覧にしたんです。
画面は数字で埋まりました。上がった会社もあれば、下がった会社もある。取引の少ない会社は、たまたまの注文ひとつで粗利率が大きく動きます。Kさんと2人で30分ほど眺めて、何もわかりませんでした。
そこでやり方を変えました。細かく見る前に、まず大きく分ける。取引先を性格の近い3つの区分にまとめたんです。
- 量販店(大手スーパー2社)
- 飲食店・ホテル
- 地域の小売店・給食
分析のコツは、いきなり細かくしないことです。大きく分けて、差が出たところだけを掘る。これだけで、見える景色がまるで変わります。
粗利率の低下は、量販店向けに集中していた
3つの区分で、前期と今期を比べた結果です。
- 飲食店・ホテル:売上3億円 → 2億7千万円。粗利率は20.0%のまま
- 地域の小売店・給食:売上3億円 → 3億円。粗利率は16.0%のまま
- 量販店:売上3億6千万円 → 4億3千万円。粗利率は10.0% → 6.5%
飲食店・ホテルと地域の小売店は、粗利率が変わっていません。下がっていたのは量販店向けだけでした。
次に、量販店向けを時期で分けました。4月から9月の上期と、10月から3月の下期です。

画像:みなと食品の粗利率を取引先区分別・時期別に前期と今期で比べた図。量販店向けの下期だけが10.0%から4.0%に下がり、他の区分は変化していないことを示している〕
上期は前期も今期も10.0%。変化はありません。ところが下期は10.0%から4.0%へ、6ポイントも下がっていました。
下期の量販店向けの売上は、1億8千万円から2億5千万円に増えています。なのに粗利は1千8百万円から1千万円へ減っていた。Kさんが画面を見ながら言いました。「7千万円多く売って、8百万円少なく稼いでたんですね」。
商品で切ると、特売チラシの40品目が残った
最後に、量販店向けの下期を商品別に見ました。粗利率が大きく下がっていたのは、約40品目。冷凍食品と加工品が中心です。
Kさんには見覚えがありました。年末商戦で、スーパーの特売チラシに載せた商品だったんです。
データは「場所」を教えてくれる。「理由」は現場にある
データでわかるのは、どこで下がったかまでです。なぜ下がったのかは、現場の人に聞くしかありません。
Kさんは営業課長と社長に話を聞きに行きました。わかったことは2つです。
1つ目。10月に大手スーパー2社と年末商戦の条件を決めたとき、特売品の納品価格を下げていました。数量を取るためです。そして年が明けても、価格を元に戻す交渉をしていませんでした。営業課長は「今戻すと、棚から外されるかもしれないので」と話していたそうです。
2つ目。年末は営業2名が、量販店の欠品対応と店頭の応援に張りついていました。その間、飲食店やホテルの宴会・おせち向けの提案が手薄になっていた。飲食店・ホテルの売上が3千万円減ったのは、ここが大きいと見ています。
この話を聞いたKさんは、こう言いました。「年末に忙しくなるほど、会社は儲かってると思ってました。逆だったんですね」。
営業出身のKさんにとって、年末の数量は手応えそのものでした。その手応えと、会社に残るお金が逆を向いていた。これに自分で気づけたことが、この回のいちばんの収穫です。
そして、第6回のあの質問にも答えられるようになりました。「粗利率の低下は、量販店向けの下期に集中しています。年末の特売で下げた納品価格が戻っていないのが主な原因で、いま見直しを進めています」。事実、見立て、次の動き。3つがそろっています。
ただ、特売をやめるのか、条件を変えて続けるのか。価格をどこまで戻すのか。ここは取引先との関係や、自社の物流の余力で答えが変わります。他社の正解を持ってきても機能しません。講座では、御社の売上データを実際に分けたうえで、どこから手をつけるかを一緒に決めていきます。
まとめ
今回のポイントは3つです。
- 決算書でわかるのは「粗利率が下がった」まで。「どこで」の答えは販売管理システムの売上データにある
- いきなり細かく見ない。取引先、時期、商品の順に大きく分けて、差が出たところだけを掘る
- データが教えてくれるのは場所まで。理由は現場の人に聞いて、はじめて打ち手につながる
社長にひとつだけお聞きします。御社でいちばん売上の大きい取引先は、いちばん粗利を残してくれている取引先でしょうか。
講座の帰り際、Kさんはこう言いました。「これ、毎月見られるようにしたいです。決算が出てから気づいたんじゃ遅いので」。次回は、どんぶり勘定を卒業するために、自社が本当に毎月見るべき経営指標を決めていきます。
よくある質問
Q. 販売管理システムがなくてもできますか
A. できます。請求書の控えや、会計ソフトの得意先別の売上でも始められます。原価まで取引先別に出せない場合は、まず売上の構成が前期からどう変わったかを見るだけでも、手がかりになります。
Q. Excelのピボットテーブルが使えないと難しいですか
A. 操作は30分あれば覚えられます。むずかしいのは操作より「どう分けるか」を決めるほうです。取引先を3〜4区分にまとめる作業は、会社のことを知っている社長と後継者にしかできません。むしろ、AIに作ってもらうのもありです。
Q. 取引先ごとの粗利率を社員に見せても大丈夫ですか
A. 最初は社長と後継者だけで見ることをおすすめします。数字の読み方が固まる前に共有すると、「あの取引先はダメだ」という話だけが先に広がってしまいます。どう手を打つかを決めてから、営業と共有する順番がおススメです。
この講座、3つのこだわり
最後に、この講座について3つだけお伝えしておきます。
1つ目、完全1対1・対面です。受講者ご自身の会社の、実際の決算書を見ながら進めます。グループ講座では、ここまで踏み込めません。
2つ目、知識を学ぶだけの講座ではありません。「自分が社長ならどう判断するか」を毎回考える、経営判断そのものを疑似体験する形式です。
3つ目、業種・会社ごとに「見るべき数字」を個別に設計します。他社向けのテンプレートをそのまま持ってくることはしません。
無料相談でお持ち帰りいただけるもの
今回の記事を読んで「うちの粗利率の低下はどこで起きているのか」と気になった社長へ。初回無料の個別相談(30分)で、御社の取引先区分別の粗利率比較表を1枚お作りしてお渡しします。
ご用意いただくのは、2期分の得意先別の売上と粗利がわかる資料です。販売管理システムから出したデータでも、会計ソフトの帳票でも、形式は問いません。当日は取引先を3〜4つの区分にまとめ、前期と今期の粗利率を並べます。できあがった表はそのままお持ち帰りいただけます。
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本日は「粗利率が2ポイント下がった犯人は誰か?売上データで探す、取引先別・商品別の分析」というテーマでブログを作成しました。
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