2026.9.28
次世代経営者育成講座⑧どんぶり勘定を卒業する。自社が本当に見るべき経営指標は3つでいい
朝でも昼でもこんばんは。〝次世代経営者育成パートナー〟中小企業診断士の田中 健太郎です。
「親(社長)が子供(後継者)に受けてほしい 次世代経営者育成講座シリーズ 食品卸売業編」の第8回です。今回のテーマは、毎月見る経営指標の選び方です。決算を待たずに、毎月の数字で会社の変化に気づけるようにする回です。
※本ブログに登場する会社・人物はすべて架空です。特定の支援先を指すものではありません。
こんな方におすすめ
- 毎月の試算表は届くが、見ているのは売上と通帳の残高だけ
- 経営指標の本を読んだが、結局どれを見ればいいのかわからなくなった
- 決算が出てから「こんなに悪かったのか」と驚いたことがある
- 後継者に、毎月の数字で会社の状態を語れるようになってほしい
前回のおさらい
第7回「粗利率が2ポイント下がった犯人は誰か?売上データで探す、取引先別・商品別の分析」で、みなと食品(仮名)の後継者Kさんは、粗利率の低下の場所を突き止めました。下がっていたのは量販店向けの下期だけ。年末の特売で下げた納品価格が、年明けも戻っていなかったんです。
講座の帰り際、Kさんはこう言いました。「これ、毎月見られるようにしたいです。決算が出てから気づいたんじゃ遅いので」。第8回はここから始まりました。
どんぶり勘定とは「見ている数字が2つしかない」状態
社長に「毎月、どの数字を見ていますか」とお聞きすると、多いのが「売上と通帳の残高」という答えです。みなと食品の社長もそうでした。
売上は前年より伸びていました。通帳の残高は季節で上下するのが当たり前なので、減っても異変のサインとして読めません。だから年末の粗利の崩れに、決算が出るまで誰も気づかなかったんです。
決算書は、銀行や税務署に出すための数字です。年に1回、過去をまとめたものです。一方で、自社の判断のために毎月見る数字があります。これを管理会計と呼びます。今回はその入口、「何を見るか」を決める回です。
最初は指標を20個並べて、社長に止められた
Kさんは真面目な方です。講座の翌週までに、本やネットで集めた経営指標を20個並べてきました。流動比率、自己資本比率、ROA、ROE、総資本回転率。Excelで毎月計算できる表まで作ってありました。
その表を社長に見せたときのことです。社長は1分ほど眺めて、こう聞いたそうです。「で、この中のどれが悪くなったら、お前は何をするんだ」。
Kさんは答えられませんでした。指標を増やすほど、1つひとつの意味は薄くなります。20個を毎月眺めて、結局どれも見なくなる。現場でよく見る光景です。
そこで講座では、20個を3つのふるいにかけることにしました。
見る指標を選ぶ3つのふるい

参考画像:みなと食品が経営指標の候補20個を3つのふるいにかけて3つに絞った図。量販店向けの粗利率、売掛金の回収日数、労働分配率の3つが残った〕
ふるい1 自社の利益を動かしているか
卸売業の粗利率は13%前後と薄いのが特徴です。みなと食品は売上10億円なので、粗利率が1ポイント動くと粗利が1千万円動きます。営業利益2千万円の半分です。
一方で流動比率は、銀行にとっては大事でも、毎月の利益を動かす数字ではありません。業種ごとに「効く数字」が違う。これが最初のふるいです。
ふるい2 毎月、すぐに出せるか
月初の10日以内に手元にそろう数字かどうかです。2ヶ月遅れで出てくる数字は、気づいたときには、もう次の月の商売が終わっています。販売管理システムと試算表から出せるものに絞りました。
ふるい3 悪くなったら、誰が何をするか決まっているか
社長の質問そのものです。悪化したときに動く人と最初の一手が決まっていない指標は、眺めるだけで終わります。ここで残ったのが3つでした。
みなと食品が毎月見ると決めた3つの数字
1つ目は、量販店向けの粗利率です。今期は年間6.5%でしたが、月で見ていれば下期の崩れは年内に気づけました。8%を下回った月は、営業課長とKさんで商品別に原因を確認すると決めました。
2つ目は、売掛金の回収日数です。計算式はこうです。
回収日数=売掛金÷(年間売上高÷365日)
みなと食品は1億9千万円÷(10億円÷365日)で約69日。前期の約67日から延びています。売上1日分は約270万円なので、回収が1日延びるだけで約270万円の現金が売掛金として寝てしまいます。毎月は直近3ヶ月の売上で計算し、延びた取引先は担当営業が確認します。
3つ目は、労働分配率です。人件費7,800万円÷粗利1億3,000万円で60%。月単位だと賞与の月に跳ね上がるので、直近12ヶ月の合計で見ます。採用や配置を決める前には、社長とKさんが必ずこの数字を確認します。
自己資本比率や債務償還年数も大事な数字です。ただ毎月はほとんど動きません。第6回で見たとおり、決算のたびに年1回確認すれば十分です。毎月の数字と年1回の数字を分ける。これだけで表はずっと軽くなります。
3つに絞ったら、親子の会話が変わった
みなと食品では、月初の役員会でA4の紙1枚を見ることにしました。3つの数字と、前月・前年同月との比較だけです。
数ヶ月たって、Kさんがこう話してくれました。「数字を見ながら話すと、父と言い合いにならないんですよ」。以前は、社長の勘とKさんの営業の手応えがぶつかっていたそうです。同じ紙を見ていれば、話は「どう手を打つか」から始まります。
ただし、みなと食品の3つが御社にも当てはまるとは限りません。製造業なら製品別の原価率、建設業なら現場別の粗利が先に来るかもしれません。ここから先は会社ごとに答えが変わるので、他社の正解は機能しません。講座では、御社の試算表を3つのふるいにかけて、毎月見る数字を一緒に決めていきます。
まとめ
今回のポイントは3つです。
- どんぶり勘定とは、売上と通帳の残高しか見ていない状態。決算を待つと、気づくのが1年遅れる
- 指標は多いほど見なくなる。「利益を動かすか」「すぐ出せるか」「誰が動くか」の3つのふるいで絞る
- 毎月見る数字と、年1回決算で見る数字を分ける。毎月の紙はA4で1枚に収める
完璧な指標を探す必要はありません。まずは3つ決めて、3ヶ月続けてみる。見ているうちに、入れ替えるべき数字も自然とわかってきます。
社長にひとつだけお聞きします。御社で毎月見ている数字のうち、悪くなったときに「誰が何をするか」まで決まっているものは、いくつありますか。
3つの数字が決まった日、社長がぽつりと言いました。「量販店の配送が増えて、現場から冷蔵車があと1台ほしいと言われてるんだ」。Kさんはすぐに聞き返しました。「それって、買って元が取れるかどうか、数字で決められるんですか」。次回は、冷蔵車両を買うべきかどうかを、投資の意思決定の考え方で判断していきます。
よくある質問
Q. 経営指標は何個くらい見ればいいですか
A. 毎月見るのは3つ、多くても5つまでをおすすめします。それ以上は、年に1回決算で見る数字に回してください。数が少ないほど、毎月続きます。
Q. 試算表が届くのが翌々月になってしまいます
A. 顧問の税理士さんに、翌月15日ごろまでに出せないか相談してみてください。粗利率や回収日数のように、販売管理システムから先に出せる数字もあります。試算表を待たずに、そちらから始める手もあります。
Q. 目安のライン(何%を下回ったら動く)はどう決めればいいですか
A. 業界平均より、自社の過去3期の数字をもとに決めるほうが実態に合います。最初はざっくりで構いません。半年ほど運用して、ラインが厳しすぎたり甘すぎたりしたら見直します。
この講座、3つのこだわり
最後に、この講座について3つだけお伝えしておきます。
1つ目、完全1対1・対面です。受講者ご自身の会社の、実際の決算書を見ながら進めます。グループ講座では、ここまで踏み込めません。
2つ目、知識を学ぶだけの講座ではありません。「自分が社長ならどう判断するか」を毎回考える、経営判断そのものを疑似体験する形式です。
3つ目、業種・会社ごとに「見るべき数字」を個別に設計します。他社向けのテンプレートをそのまま持ってくることはしません。
無料相談でお持ち帰りいただけるもの
今回の記事を読んで「うちは毎月、何を見ればいいのか」と気になった社長へ。初回無料の個別相談(30分)で、御社が毎月見るべき経営指標を3つ選び、1枚の指標シートにしてお渡しします。
ご用意いただくのは、直近の決算書2期分と、直近の月次試算表です。当日は3つのふるいにかけて指標を選び、それぞれの今の数字と「悪くなったら誰が確認するか」まで書き込みます。できあがったシートはそのままお持ち帰りいただけます。
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本日は「どんぶり勘定を卒業する。自社が本当に見るべき経営指標は3つでいい」というテーマでブログを作成しました。
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