2026.9.6
次世代経営者育成講座シリーズ 食品卸売業編④損益計算書だけ見てない?後継者が財務3表を「つながり」で理解する回
朝でも昼でもこんばんは。〝次世代経営者育成パートナー〟中小企業診断士の田中 健太郎です。
「親(社長)が子供(後継者)に受けてほしい 次世代経営者育成講座シリーズ 食品卸売業編」の第4回です。今回のテーマは、損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書の3つを、バラバラの書類ではなく「つながった1セット」として読む回です。ここを越えると、後継者の数字の見え方が一段変わります。
※本ブログに登場する会社・人物はすべて架空です。特定の支援先を指すものではありません。
こんな方におすすめ
- 後継者が損益計算書しか見ておらず、貸借対照表を開いたことがない
- 利益が出た年なのに、現預金が減っていた理由を説明できない
- 減価償却がなぜ利益から引かれるのか、腹落ちしていない
- キャッシュフロー計算書を作ったことがない、または見方がわからない
前回のおさらい
第3回「黒字なのにお金が残らない理由は『営業循環』にあった」で、みなと食品(仮名)の後継者Kさんは、自社が45日分のお金を立て替えていることを知りました。金額にして1億3千4百万円。借入金の残高とほぼ同じでした。
その日の帰り際、Kさんがこう聞いてきたんです。「利益は損益計算書に載っていますよね。じゃあ、あの1億3千4百万円は、決算書のどこに載っているんですか」。いい質問です。第4回はここから始まりました。
3つの表は、それぞれ違う質問に答えている
財務3表は、同じ会社を3つの角度から見た書類です。役割を一言ずつにすると、こうなります。
- 損益計算書(PL):この1年で、いくら儲けたか
- 貸借対照表(BS):今この瞬間、何を持っていて、そのお金は誰のものか
- キャッシュフロー計算書(CF):この1年で、現預金がなぜその金額になったか
PLとCFは1年間の話、BSだけが「決算日という一瞬」の写真です。ここを混ぜて理解しようとすると、必ず混乱します。Kさんが探していた1億3千4百万円は、BSの資産の側、売掛金と在庫のところに載っていました。
〔損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書のつながりを示した図〕

つながり1 利益はどこへ行くのか
まず1本目の線です。PLのいちばん下、当期純利益は、BSの純資産の中にある繰越利益剰余金へ積み上がります。
みなと食品の当期純利益は1千2百万円でした。ですからBSの純資産は、前期より1千2百万円ぶん厚くなっています。ここまではKさんもすんなり理解しました。
ところが、同じ決算書で現預金を見ると、前期より8百万円減っていたんです。利益は1千2百万円出ているのに、通帳は8百万円減っている。Kさんは「どちらかが間違っているんじゃないですか」と言いました。どちらも合っています。この差を説明するのが3本目の表、キャッシュフロー計算書です。
つながり2 利益と現預金の差を埋める表
みなと食品のキャッシュフロー計算書を、ざっくり作ってみました。数字は架空ですが、構造は実際のものと同じです。
営業活動によるキャッシュフローは、当期純利益1千2百万円から始めます。そこに減価償却費1千8百万円を足し戻し、売掛金の増加1千5百万円と在庫の増加4百万円を引き、買掛金の増加3百万円を足す。結果は1千4百万円のプラスでした。
投資活動によるキャッシュフローは、配送センターの冷蔵設備を更新したので2千2百万円のマイナス。財務活動によるキャッシュフローは、新しく借りた分と返した分がほぼ同額で、差し引きゼロ。
1千4百万円から2千2百万円を引いて、ゼロを足す。答えはマイナス8百万円です。BSの現預金の減少額とぴったり一致しました。この瞬間、Kさんの表情が変わったのを覚えています。「利益と現金は、こうやってつながっていたんですね」。
後継者がいちばんつまずくのは減価償却
ここで多くの後継者が引っかかるのが、減価償却費を足し戻すという操作です。
Kさんも「なぜ費用なのに足すんですか」と聞きました。減価償却費は、PLでは費用として利益から引かれます。でも、その年に現金が出ていったわけではありません。お金が出たのは設備を買った年です。減価償却は、そのときの支出を何年かに分けて費用に振り分けているだけなんですね。
だから現金の話をするときは、いったん足し戻して現実に戻す。逆に言えば、みなと食品が本業で生み出した現金の力は、利益1千2百万円ではなく、減価償却を足した3千万円のほうが実態に近い、ということになります。
ここは口で説明しても通じにくいところです。自社の決算書で一度この足し戻しをやってもらうと、だいたい一発で腹落ちします。
3つのCFの符号で、会社の今がわかる
キャッシュフロー計算書のいいところは、3つの符号の組み合わせで会社の状態がざっくり読めることです。
みなと食品はプラス・マイナス・ゼロ。本業で現金を稼ぎ、それを設備に投じ、借入は増やしていない。形としては悪くありません。ただ、投資2千2百万円が営業CFの1千4百万円を上回っているので、足りない8百万円は手元資金を取り崩して埋めた、ということでもあります。
これが2年、3年と続けばどうなるか。Kさんはすぐに気づきました。「手元が薄くなっていきますね」。そのとおりです。
では、営業CFを厚くするのか、投資のペースを落とすのか、それとも設備投資に見合う借入を組むのか。ここから先は、手元にいくら残っているか、金融機関との関係がどうかで答えが変わります。他社の正解が使えない領域なので、講座では御社のCFを実際に3期分並べたうえで、どこを触るかを一緒に決めていきます。
まとめ
今回のポイントは3つです。
- PLは1年間、BSは決算日という一瞬、CFは1年間の現金の動き。答えている質問が違う
- 利益は純資産に積まれ、利益と現預金の差はキャッシュフロー計算書が説明する
- 減価償却はお金が出ていない費用。足し戻すと、本業の本当の現金創出力が見える
社長にひとつだけお聞きします。利益が出た年に現預金が減っていたとして、その理由を息子さんは3表のどこを見て説明するでしょうか。PLだけを見ている限り、この問いには一生答えられません。
次回は「季節商売の資金繰り、なぜ年末にヒヤヒヤするのか」というテーマで、年間を通じた資金の波を見ていきます。
よくある質問
Q. 中小企業でもキャッシュフロー計算書は必要ですか
A. 作成義務はありません。ただ、PLとBSの2期分があれば簡易版は作れます。1枚あるだけで金融機関との会話の精度が上がりますので、作っておいて損はありません。
Q. 減価償却を足し戻した金額は、そのまま返済に回せるお金と考えていいですか
A. 目安にはなりますが、そのままではありません。売掛金や在庫が増えれば、その分は現金として手元に残りません。第3回でお話しした運転資金の増減を差し引いて考える必要があります。
Q. 後継者にはどの表から見せるのがいいでしょうか
A. 私はPLから入ります。売上と利益はいちばん馴染みがあるからです。ただしPLだけで止めると今回のような疑問が解けません。3表を行き来する練習を、早い段階で入れたほうがいいと考えています。
この講座、3つのこだわり
最後に、この講座について3つだけお伝えしておきます。
1つ目、完全1対1・対面です。受講者ご自身の会社の、実際の決算書を見ながら進めます。グループ講座では、ここまで踏み込めません。
2つ目、知識を学ぶだけの講座ではありません。「自分が社長ならどう判断するか」を毎回考える、経営判断そのものを疑似体験する形式です。
3つ目、業種・会社ごとに「見るべき数字」を個別に設計します。他社向けのテンプレートをそのまま持ってくることはしません。
無料相談でお持ち帰りいただけるもの
今回の記事を読んで「うちは利益と現金がどうつながっているのだろう」と思われた社長へ。初回無料の個別相談(30分)で、御社の簡易キャッシュフロー計算書を1枚お作りします。
ご用意いただくのは直近2期分の決算書だけです。当日は、営業・投資・財務の3つのキャッシュフローがそれぞれいくらか、減価償却を足し戻した本業の現金創出力がいくらかまでご説明します。作った表はそのままお渡ししますので、後継者の方と一緒にご覧ください。売り込みはいたしません。
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本日は「損益計算書だけ見てない?後継者が財務3表を『つながり』で理解する回」というテーマでブログを作成しました。
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