次世代経営者育成講座シリーズ 食品卸売業編③

朝でも昼でもこんばんは。〝次世代経営者育成パートナー〟中小企業診断士の田中 健太郎です。

「親(社長)が子供(後継者)に受けてほしい 次世代経営者育成講座シリーズ 食品卸売業編」の第3回です。今回のテーマは、決算書は黒字なのに通帳のお金が増えない、あの現象の正体です。多くの社長が肌感覚では知っていることですが、後継者にその理由を説明できているでしょうか。

※本ブログに登場する会社・人物はすべて架空です。特定の支援先を指すものではありません。

こんな方におすすめ

  • 決算は黒字なのに、月末の資金繰りにヒヤヒヤしている
  • 後継者に「儲かっているのになぜ借入が減らないのか」を説明できない
  • 売上が伸びた年ほど、なぜか資金が苦しくなる
  • 利益とお金は別物、と聞いたことはあるが人に説明できない

前回のおさらい

みなと食品(仮名)の後継者Kさんは、第2回「うちの会社、実は何で儲かってる?」でお金のブロックパズルを描き、自社の収益構造を初めて図で見ました。粗利率は業界平均よりやや低め、経費の中では配送コストが大きく、労働分配率は60%を超えていました。

その回の帰り際、Kさんがぽつりと言ったんです。「利益は出ているはずなのに、うちはいつも支払いの前に父が銀行に走っているんですよね」。第3回はここから始まりました。

利益とお金がずれる理由

まず前提の確認です。損益計算書の売上は、入金された日ではなく、商品を納品した日に立ちます。仕入も同じで、支払った日ではなく、モノを受け取った日に費用として計上されます。

つまり決算書の利益は「約束の帳簿」なんです。実際のお金が動くのは、その約束から数十日遅れてやってきます。このズレを、私は営業循環と呼んで説明しています。仕入れて、在庫として持って、売って、代金を回収する。この一周にかかる日数が長いほど、会社はお金を立て替えている時間が長い、ということになります。

みなと食品の一周は45日だった

Kさんと一緒に、みなと食品の営業循環を日数で数えてみました。数字は架空ですが、食品卸売業ではよくある水準です。

  • 売掛金の回収サイト:約70日(月末締め、翌々月10日入金の取引先が多い)
  • 在庫が倉庫にとどまる期間:約15日
  • 買掛金の支払サイト:約40日

70日と15日を足して、40日を引く。答えは45日です。みなと食品は、お金を払ってから戻ってくるまでの45日分を、常に自腹で立て替えているわけです。

これを金額にするとどうなるか。運転資金の計算式は、売掛金+在庫−買掛金です。年商10億円のみなと食品では、売掛金が約1億9千万円、在庫が約3千6百万円、買掛金が約9千6百万円。差し引き1億3千4百万円が、常に会社の外に出たまま戻ってこないお金として滞留しています。

Kさんはこの1億3千4百万円という数字を見て、しばらく黙っていました。「これ、借入金の残高とだいたい同じですね」。そのとおりです。現社長(お父様)が借りてきたお金は、無駄遣いで消えたわけではありません。この45日を回すために、会社の中に形を変えて眠っているんです。

売上が伸びると資金が苦しくなる

ここからが、営業した経験のあるKさんに一番効いた話でした。

Kさんは大手食品メーカーで3年間営業をしていた人です。だから資金繰りが苦しいと聞けば、答えは「もっと売る」だと思っていました。ところが営業循環の図を見ると、逆のことが起きます。

売上が1割伸びれば、売掛金も在庫も1割増えます。買掛金も増えますが、差し引きの1億3千4百万円もそのまま1割、つまり約1千3百万円ふくらむ。これが増加運転資金です。新しく1千3百万円を用意しないと、売上が伸びた分だけ資金は苦しくなるんですね。

黒字倒産という言葉がありますが、あれは業績が悪くて起きるものではありません。むしろ伸びている会社ほど起きます。ここを知らずに売上目標だけを掲げると、いちばん調子のいい年にいちばん危ない橋を渡ることになります。

「じゃあ、うちは伸ばしちゃいけないんですか」とKさんは聞きました。そうではありません。伸ばす前に、何日分を立て替える体力があるかを先に測っておく。順番の問題です。

45日をどう縮めるか、の前に

営業循環を短くする方向は3つしかありません。回収を早くするか、在庫の日数を減らすか、支払いを遅くするか。理屈はこれだけです。

ただ、ここから先は他社の正解が使えません。回収を早めるといっても、長年の主要取引先に条件変更を切り出せば関係が揺れます。在庫を減らせば欠品が起き、営業が謝りに回ることになる。支払いを遅らせれば、仕入先からの扱いが変わるかもしれません。どれも数字の話ではなく、取引先との関係の話です。

だから講座では、日数を出すところまでを一緒にやったうえで、御社にとって「触っていい場所」と「触ってはいけない場所」を仕分けするところに時間を使います。みなと食品の場合、Kさんが選んだのは回収でも支払いでもなく、在庫でした。その理由は、自社だけで完結する打ち手だったからです。

まとめ

今回のポイントは3つです。

  • 決算書の利益は約束の帳簿。実際のお金は数十日遅れて動く
  • 営業循環の日数(回収+在庫−支払)が、立て替えているお金の正体を教えてくれる
  • 売上が伸びれば運転資金も同じ割合で増える。伸ばす前に体力を測る

社長にひとつだけお聞きします。御社が何日分のお金を立て替えているか、そして借入金がなぜその金額になっているのかを、息子さんは説明できるでしょうか。ここが分からないまま承継すると、資金繰りが苦しくなった瞬間に、原因が業績なのか循環なのかを切り分けられません。

次回は「損益計算書だけ見てない?」というテーマで、貸借対照表とキャッシュフロー計算書まで含めた財務3表のつながりを見ていきます。

よくある質問

Q. 営業循環の日数は、決算書だけあれば計算できますか

A. 計算できます。売掛金・棚卸資産・買掛金の残高と、売上高・売上原価があれば出せます。ただ、期末の残高は季節要因で偏ることがあるので、可能であれば月次の残高推移も見たほうが実態に近づきます。

Q. 在庫を減らせば資金繰りは楽になりますか

A. 数字の上ではそうなります。ただし欠品が増えて売上を落とせば本末転倒です。全商品を一律に絞るのではなく、動きの遅い商品から手をつける順番が要になります。

Q. 後継者にこの話をしても、ピンとこない気がします

A. 説明だけだと、ほぼ通じません。自社の実際の数字で日数を計算してもらうと、急に自分ごとになります。みなと食品のKさんも、電卓を叩いた瞬間に顔つきが変わりました。

この講座、3つのこだわり

最後に、この講座について3つだけお伝えしておきます。

1つ目、完全1対1・対面です。受講者ご自身の会社の、実際の決算書を見ながら進めます。グループ講座では、ここまで踏み込めません。

2つ目、知識を学ぶだけの講座ではありません。「自分が社長ならどう判断するか」を毎回考える、経営判断そのものを疑似体験する形式です。

3つ目、業種・会社ごとに「見るべき数字」を個別に設計します。他社向けのテンプレートをそのまま持ってくることはしません。

無料相談でお持ち帰りいただけるもの

今回の記事を読んで「うちは何日分立て替えているのだろう」と思われた社長へ。初回無料の個別相談(30分)で、御社の営業循環を1枚の図にしてお渡しします。

ご用意いただくのは直近の決算書だけです。当日は、回収・在庫・支払の日数と、運転資金がいくら滞留しているか、売上が1割伸びたら追加でいくら必要になるかまでご説明します。図はそのままお持ち帰りいただけますので、後継者の方と一緒にご覧ください。売り込みはいたしません。

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本日は「黒字なのにお金が残らない理由は『営業循環』にあった」というテーマでブログを作成しました。

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今日は朝から補助金関連のご相談。
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今年も就労支援施設へのコンサルティングの季節が到来してきました。今回はこれまでの反省を活かし、口出しだけでなく、実務へ手を出してお手伝いしていこうかと考えてたりします。

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