「社長の右腕を、AIで作ってみた(第3回・社員づくり編)」

朝でも昼でもこんばんは。〝経営数字とAI活用のパートナー〟中小企業診断士の田中 健太郎です。

前回は、AIに最初に読ませる「指示書」の話をしました。会社でいう、新人さんに渡す申し送りメモですね。土台ができたので、今日はいよいよ、実際にAIの担当を作って動かす話です。役割の決め方、指示の出し方、そして予定表やメールとのつなぎ方まで。チームが目に見えて動き出す回です。

こんな方におすすめ

  • AIに何を任せればいいか、いまいち決めきれない
  • 頼んでも、答えがぼんやりしていて使えないことがある
  • 予定の確認やメールの下書きまで、AIに任せられるなら任せたい
  • 過去の資料を探す時間を、なんとか減らしたい
  • AIに自分の道具を使わせる、というのがどういうことか知りたい

はじめに

前回までで、AIに自社のことを教える土台はできました。ただ、土台だけでは、まだ「物知りな相談相手」止まりです。本当に手間が減り始めるのは、ここからです。

ポイントは二つだけ。ひとつは、AIに「役割」をはっきり与えること。もうひとつは、AIに「道具」を持たせることです。この二つがそろった瞬間に、AIはただの相談相手から、実際に手を動かすスタッフに変わります。順番に見ていきましょう。

担当の決め方:欲張らない

第1回で、私が9人も作って持て余した話をしました。その反省をふまえて言うと、担当は欲張らないのが鉄則です。

決め方はシンプルです。前回までにやった棚卸しを見て、毎日のように発生して、しかも自分が手放したい作業を選ぶ。それごとに担当を一人立てる。これだけです。私の場合は、予定やメールをさばく秘書役、ブログや集客をする集客担当、数字を読んで資料に整える分析・資料作成担当。この3人に落ち着きました。最初から完成形を目指さず、まずは一番面倒な作業の担当を一人作る、くらいの気持ちで十分です。

指示の出し方:役割を一文ではっきりさせる

担当を作るといっても、難しい操作はいりません。やることは、その担当に「あなたは何者で、何をする人か」を言葉で与えるだけです。ここが甘いと、AIは途端にぼやけます。

たとえば、こんな頼み方。

「いい感じにまとめておいて」

これは一番ダメな指示です。何を、誰に向けて、どんな形でまとめるのか、基準が何もありません。人間の新人さんでも困りますよね。

これを、こう変えます。

「あなたは資料作成の担当です。提案書を作るときは、結論を先に書く。根拠は必ず数字で示す。全体はA4一枚に収める」

役割と、やり方のルールがはっきりしました。こう与えるだけで、出てくるものの質がまるで変わります。AIは賢いのですが、エスパーではありません。何を期待しているかを言葉にして渡す。これは人を育てるのと、まったく同じです。

「何でも屋」にして失敗した話

正直に白状すると、私は最初これを間違えました。秘書役に「予定もメールも資料も数字も、全部いい感じにやって」と、何でも屋として詰め込んだのです。

結果、どれも中途半端でした。資料を頼めば浅く、数字を頼めばざっくり。一人にあれもこれもと背負わせたせいで、どの仕事にも芯が通らなかったんです。そこで、担当を分けて、それぞれに役割を一文ではっきり与え直しました。すると、同じAIとは思えないほど、一つひとつの精度が上がりました。役割をしぼると、かえって力を発揮する。これも、人の組織とそっくりですよね。

窓口は一人にしぼる

担当を分けると、今度は「どの担当に頼めばいいんだっけ」と迷いそうになります。そこで私がやったのが、窓口を秘書役の一人にしぼることでした。

私が話しかける相手は、いつも秘書役だけ。資料がほしいときも、数字を見てほしいときも、秘書役に言うだけです。あとは秘書役が、中で適切な担当に振り分けてくれる。こうすると、何人いようと、こちらが向き合うのは常に一人。頭の中がすっきりします。社長は、現場の担当全員に直接指示を出すより、右腕に伝えるほうがラクですよね。あの感覚です。

道具を持たせる:ここで一気に実用化する

役割が決まったら、最後に道具を持たせます。私はここで、AIが本当に戦力になったと感じました。

具体的には、自分が普段使っている予定表やメール、ファイルの保管場所と、AIをつないでいきます。専門的にはこのつなぐ仕組みを横文字で呼びますが、名前は覚えなくて大丈夫。要は「AIに、自分の道具を使わせてあげる」ことだと思ってください。つなぐと、こんなことが起きます。

予定表をつなぐと、朝に「今日の予定は?」と聞くだけで、その日の面談相手や時間を整理し、何を準備すべきかまで添えて返してくれます。私の場合、これが毎朝自動で届くようにしてあって、一日の出だしがまるで変わりました。メールをつなげば、返信がまだのお客様からのメールを拾い、下書きまで用意してくれる。ファイルの保管場所をつなげば、過去の議事録や提案書を探してきてくれる。あの「あの資料どこだっけ」の時間が、ごっそり消えました。

役割を持っただけのAIが、道具を手にした瞬間に、実際に動くスタッフになる。この変化は、ぜひ体感してほしいところです。

便利だからこそ、慎重に

ただし、一つ釘を刺しておきます。道具をつなぐということは、AIに自分の予定やメール、ファイルを触らせるということです。とても便利な反面、任せ方を間違えると事故にもなりえます。だからこそ、次回はこの「安全に使う」話を、まるまる一回かけてお伝えします。ここは飛ばさずに読んでほしい回です。

まとめ

今日の話を三つにまとめます。

  • 担当は欲張らない。毎日発生して手放したい作業から、一人ずつ立てる
  • AIには役割を一文ではっきり与える。「いい感じに」は禁句。何者で何をするかを言葉にする
  • 最後に予定表・メール・ファイルとつなぐと、相談相手が実際に動くスタッフに変わる。窓口は一人にしぼると迷わない

AIチームづくりは、特別なIT知識の勝負ではありません。役割をはっきりさせて、道具を持たせる。やっていることは、人を採用して仕事を任せるのと、ほとんど同じです。だからこそ、ふだん人に任せるのが上手な経営者ほど、AIを動かすのも上手だったりします。

次回は、この便利さの裏側にある「安全に使うための注意点」です。勝手に上書きさせない、消させない、大事な情報をどう守るか。一番地味で、一番大事な回になります。

よくある質問

Q. 道具とつなぐのは、難しい操作が必要ですか?

A. 思っているより簡単で、画面の案内に沿って許可していく作業が中心です。ただし、何を許可しているのかは必ず理解しておくべきです。その勘所は次回お話しします。

Q. 担当はあとから増やせますか?

A. 増やせます。まず少人数で慣れて、「この作業も任せたい」と明確になってから足すのが失敗しないコツです。最初から全部そろえようとしないでください。

Q. 全部つなぐ必要がありますか?

A. いいえ。まずは効果の大きい予定表だけ、から始めて十分です。一つつないで便利さを実感してから、次に進むのがおすすめです。

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