次世代経営者育成講座シリーズ 食品卸売業編⑤季節商売の資金繰り、なぜ年末にヒヤヒヤするのか

朝でも昼でもこんばんは。〝次世代経営者育成パートナー〟中小企業診断士の田中 健太郎です。

「親(社長)が子供(後継者)に受けてほしい 次世代経営者育成講座シリーズ 食品卸売業編」の第5回です。今回のテーマは資金繰りです。それも、年間を通じた「お金の波」の話をします。決算書は1年に1回しか出てきませんが、資金は毎月動いています。ここを見ていないと、儲かっている月と手元が薄い月がズレていることに気づけません。

※本ブログに登場する会社・人物はすべて架空です。特定の支援先を指すものではありません。

こんな方におすすめ

  • 繁忙期のある商売なのに、資金繰りを年平均でしか見ていない
  • 毎年決まった時期に、社長が銀行へ短期の相談に行っている
  • 後継者が「売上が増えれば資金は楽になる」と思っている
  • 資金繰り表を作ったことがない、または作ったが続かなかった

前回のおさらい

第4回「損益計算書だけ見てない?後継者が財務3表を『つながり』で理解する回」で、みなと食品(仮名)の後継者Kさんは、利益と現預金がキャッシュフロー計算書でつながっていることを理解しました。利益は1千2百万円出ているのに、現預金は8百万円減っている。その理由まで説明できるようになりました。

その日の帰り際、Kさんがこう言ったんです。「1年でならすと、こういう形なんですね。じゃあ、うちは1年のうち、いつがいちばん手元が薄いんですか」。第5回はここから始まりました。

年商10億円の会社が、12月に1億3千万円売る

みなと食品は食品卸売業です。年商10億円、従業員28名。月商にならすと8千3百万円ですが、実際に月ごとに並べると、まったく平らではありません。

お歳暮、年末年始の外食需要、正月商材。12月の売上は1億3千万円まで跳ね上がります。逆に1月は6千5百万円まで落ちる。上と下で倍近い差があるんですね。

Kさんは営業出身ですから、この波は肌感覚で知っていました。「12月がうちの稼ぎ時です」と即答しました。そのとおりです。ただ、資金の側から見ると、話が少しややこしくなります。

売った月と、お金が入る月は違う

第3回で確認したみなと食品の条件を、もう一度並べます。売掛金の回収は約70日、買掛金の支払いは約40日。仕入は売上の85%です。

この条件で、12月に何が起きるかを追いかけてみます。

まず12月。1億3千万円を売るために、仕入も1億1千万円まで膨らみます。通常月の7千万円に対して、4千万円の上乗せです。ただし、この仕入代金の支払いは40日後ですから、12月の時点ではまだ財布から出ていきません。12月に出ていくのは11月仕入分の7千万円と、賞与の1千2百万円です。

ここまでで、すでに社長の顔が曇り始めます。でも、本当の谷はまだ先です。

谷の底は年末ではなく、2月の手前にある

1月末から2月上旬。ここで12月仕入分の1億1千万円の支払いがやってきます。

そのとき入ってくるお金は何かというと、11月に売った8千3百万円分です。70日サイトですから、11月売上の入金がこの時期になる。出ていくのが1億1千万円、入ってくるのが8千3百万円。差し引き2千7百万円の持ち出しです。

では、稼ぎ頭の12月売上1億3千万円はいつ入るのか。70日後、つまり2月の下旬です。支払いがすべて終わったあとなんですね。

ここでKさんが言いました。「じゃあ、12月に売れば売るほど、2月の手前が苦しくなるってことですか」。そのとおりです。売上が増えれば資金は楽になる、という感覚は、季節商売では逆に働くことがあります。

毎年この時期に社長が銀行へ足を運んでいた理由も、これで説明がつきました。第3回でKさんが漏らしていた「支払いの前に父が銀行に走っている」の正体は、ここだったわけです。

この波は、去年の数字を並べるだけで見える

ここで大事なのは、この谷が予測でも勘でもなく、去年の実績から計算できるということです。

やることは単純で、直近12ヶ月の月次試算表から、月ごとの売上と仕入を横に並べます。そこに回収サイトと支払サイトのぶんだけズラして、入金月と出金月に置き直す。それだけで、どの月に手元が薄くなるかが1枚で見えます。

支援の現場でよく見かけるのが、月の平均で資金繰りを考えているケースです。年商10億円だから月8千3百万円、そこから経費を引いて毎月これくらい残る、という計算ですね。この見方だと、12月から2月にかけての谷が完全に消えてしまいます。平らな数字は安心感を与えますが、実際に資金がショートするのは平らな月ではありません。

もうひとつ多いのが、資金繰り表を作ったけれど3ヶ月で止まってしまったケースです。理由はだいたい同じで、細かく作りすぎているんです。日繰りで、勘定科目を全部並べて、実績と予定を毎日更新する。続くわけがありません。季節の波を見るだけなら、月次で、大きな項目だけで十分です。

数字が見えたら、打ち手は3方向ある

谷の位置と深さがわかると、対策は考えられるようになります。方向としては3つです。

  • 入りを早める:12月の売上の一部を、前金や決済手段を変えることで回収を早める
  • 出を遅らせる:12月仕入分の支払条件を、仕入先と交渉する
  • 足りない分を先に用意する:毎年同じ時期に同じ谷が来るとわかっているなら、短期の枠をあらかじめ組んでおく

Kさんに「どれからやりますか」と聞いたら、少し考えて「3つ目です」と答えました。理由も明快でした。1つ目と2つ目は相手のある話だけれど、3つ目は今すぐ動けるから、と。

付け加えると、3つ目には副次的な効果もあります。決算後に慌てて相談に行くのと、「毎年2月に谷が来るので、その前に枠をお願いしたい」と数字を持って先に相談に行くのとでは、金融機関側の受け止め方がまるで違います。後者は資金繰りを管理できている会社の行動なんですね。

ただ、どの方向をどの順番で、いくらの規模でやるかは、取引先との力関係、金融機関との取引状況、手元資金の厚みで答えが変わります。他社の正解をそのまま持ってきても機能しない領域です。講座では、御社の12ヶ月の実績を実際に並べたうえで、どこを触るかを一緒に決めていきます。

まとめ

今回のポイントは3つです。

  • 季節商売では、売った月とお金が入る月がズレる。谷は繁忙期の直後に来る
  • 売上が増えると資金は一時的に苦しくなる。増収と資金繰り悪化は同時に起こりうる
  • 谷の位置は予測ではなく、去年の12ヶ月の実績を並べれば計算できる

社長にひとつだけお聞きします。毎年決まった時期に短期の資金を手当てされているとして、その理由と金額の根拠を、息子さんはご自身の言葉で説明できるでしょうか。社長の頭の中にある年間のカレンダーは、口で伝えても、なかなか引き継がれません。

次回は「粗利率だけでは判断できない。取引先別・商品別の財務分析」というテーマで、全体の平均では見えない儲けの中身に入っていきます。

よくある質問

Q. 資金繰り表はエクセルで十分ですか

A. 十分です。専用ソフトは要りません。横に12ヶ月、縦に入金・出金の大きな項目だけ。1枚に収まる大きさで作るほうが、結果的に続きます。

Q. どのくらい先まで作ればいいですか

A. 通常は6ヶ月先までで足ります。ただし季節の波がある商売なら、最低でも12ヶ月を1枚で見てください。半年で切ると、谷が表の外に出てしまうことがあります。

Q. 予測が外れたら意味がないのではないですか

A. 当てるための表ではありません。外れ方を見るための表です。予定と実績の差が毎月どちらにどれくらい出るかがわかれば、次の月の精度が上がります。最初の3ヶ月は外れて当たり前です。

この講座、3つのこだわり

最後に、この講座について3つだけお伝えしておきます。

1つ目、完全1対1・対面です。受講者ご自身の会社の、実際の決算書を見ながら進めます。グループ講座では、ここまで踏み込めません。

2つ目、知識を学ぶだけの講座ではありません。「自分が社長ならどう判断するか」を毎回考える、経営判断そのものを疑似体験する形式です。

3つ目、業種・会社ごとに「見るべき数字」を個別に設計します。他社向けのテンプレートをそのまま持ってくることはしません。

無料相談でお持ち帰りいただけるもの

今回の記事を読んで「うちの谷はいつだろう」と思われた社長へ。初回無料の個別相談(1時間)で、御社の年間資金の波を1枚のグラフにしてお渡しします。

ご用意いただくのは、直近12ヶ月の月次試算表だけです。お持ちでなければ、月別の売上と仕入がわかるものでかまいません。当日は、どの月に手元がいちばん薄くなるか、その谷がいくらの深さかまでご説明します。作ったグラフはそのままお渡ししますので、後継者の方と一緒にご覧ください。売り込みはいたしません。

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本日は「季節商売の資金繰り、なぜ年末にヒヤヒヤするのか」というテーマでブログを作成しました。

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