2026.7.21
時給1,100円のパートさんを雇うと、実際いくらかかるのか?っていう雇用問題の話。
朝でも昼でもこんばんは。〝次世代経営者育成パートナー〟中小企業診断士の田中 健太郎です。
本日は「人を雇うのが怖い」というお話です。先日うかがった会社の社長さんから、こんな言葉が出てきました。時給に見合う働きをしてくれるか分からない。仕事をなかなか覚えてくれない。やっと覚えたと思ったら辞めてしまう。だから求人を出す一歩が踏み出せない、と。おそらく、同じことを感じている社長さんはとても多いと思います。
こんな方におすすめ
- 人手は足りていないが、求人を出す決心がつかない
- 時給に見合う成果が出るのか不安で、採用に踏み切れない
- 教えても仕事を覚えてもらえず、結局自分でやってしまう
- やっと戦力になった人に辞められた経験がある
- 社長である自分が現場作業から抜けられない
はじめに
「雇っても、その分だけ稼いでくれるか分からんとですよ」
「教える時間を考えたら、自分でやったほうが早い」
こんな悩み、ありませんか。私が支援してきた経営者の方からも本当によく聞きます。そして面白いことに、この不安を口にされる社長さんに「では、実際にいくらかかると思っていますか」と聞くと、はっきり答えられる方はほとんどいません。
怖さの正体は、金額の大きさではないんです。金額が見えていないこと。これが正体です。見えないものは、人間、実際より大きく見積もってしまいますよね。だから今日は、この不安を一度、数字にバラしてみます。
時給1,100円は、月にいくらの支出になるのか
仮に、時給1,100円で月100時間(週25時間ほど)働いてもらうパートさんを雇うとします。
直接見えているコスト
給与は1,100円×100時間で110,000円。ここまでは誰でも計算します。ただ、実際に会社から出ていくお金はこれだけではありません。
- 社会保険料の会社負担分(加入する場合) 約16,500円
- 通勤手当 約5,000円
- 採用にかかった費用を12ヶ月で割った分 約3,000円
- 制服、備品、パソコンなど 約2,000円
合計すると、月およそ136,500円。年間で約164万円です。時給の感覚だけでいると、この2割増しの部分をまるごと見落とすことになります。
誰も計算しない、いちばん高いコスト
そしてもう一つ。教える側の時間です。
最初の3ヶ月、社長が月20時間つきっきりで指導したとします。社長の時間単価はいくらでしょうか。年間の役員報酬と、社長が生み出している粗利から逆算すると、5,000円を下回ることはまずありません。仮に5,000円とすれば、月10万円。3ヶ月で30万円です。
つまり初年度の実質負担は、164万円+30万円で約194万円。「時給1,100円だから安い」という感覚と、実際に会社が背負う金額は、ここまで開きます。
ではなぜ、それでも雇ったほうがいいのか
ここで話が終われば「やっぱり雇わないほうがいい」となりますが、逆です。数字にすると、判断の基準がはっきりします。
粗利率30%の会社であれば、年間194万円を回収するのに必要な売上は約647万円。月にすると54万円ほど。この金額を、その人が直接稼ぐ必要はありません。社長が空けた時間で稼げばいいんです。
建設業のA社さん(従業員8名、年商1.8億円)は、社長が見積作成と請求書発行に月40時間を使っていました。事務パートの採用を3年迷い続けていた会社です。数字を並べて一緒に見たとき、社長がぽつりと言いました。「俺の40時間のほうが高かったね」と。
採用後、社長の見積提出が翌日に出せるようになりました。それだけで受注が2件増え、粗利で約400万円。194万円のコストは、半年で回収できた計算になります。
「覚えてくれない」「辞めてしまう」への対策
対策1 任せる仕事を、時給で仕分ける
社長がやると1万円の価値がある仕事と、1,100円で回る仕事を紙に書き出して分けてください。見積の中身を決めるのは前者、フォーマットに転記して送るのは後者です。この仕分けをせずに「なんとなく手伝って」と任せるから、何を覚えるべきかが本人にも分からなくなります。覚えてくれないのではなく、覚える対象が定義されていないことのほうが、現場では圧倒的に多いです。
対策2 戦力化までの期間を、あらかじめ予算に入れる
採用は投資です。設備を入れるとき、初月から利益が出るとは誰も思いませんよね。人も同じで、3ヶ月から6ヶ月は回収前の期間です。ここを最初から予算に組み込んでおくと、2ヶ月目に「まだ見合っていない」と焦らずに済みます。焦りは必ず本人に伝わりますし、その空気が離職の引き金になります。
対策3 辞めても会社に残る形にしておく
これが「やっと覚えたのに辞める」への唯一の答えです。人に覚えてもらうのではなく、手順を会社に残す。紙のマニュアルが重ければ、作業しているパソコン画面を録画して3分の動画にするだけでも十分です。最近はAIに作業内容を話しかけるだけで手順書の下書きが作れますから、以前より格段にラクになりました。
改善イメージ例
製造業のB社さん(従業員12名、年商2.5億円)は、事務職の採用で3人続けて半年以内に辞められていました。
原因を聞き取っていくと、教える人が日によって違い、しかも人によってやり方が微妙に違う。新しく入った方は、どれが正解か分からないまま怒られる状態でした。これでは辞めます。
やったことは2つだけです。頻度の高い業務10個について、画面録画で3分程度の手順動画を作ったこと。そして入社1ヶ月間のチェックリスト(1週目に覚えること、2週目に覚えること)を用意したこと。作成には社長と事務長で合計15時間ほどかかりました。
4人目の方は、2年目の今も勤めています。社長の感想がこれでした。
「教える手間が減ったことより、辞められても怖くなくなったのが大きい」
※こちらは実際の改善事例ではなく、あくまで改善するイメージの例です。
まとめ
- 採用の怖さは金額の大きさではなく、金額が見えていないことから来る。まず実質コストを出してみる
- 回収するのはその人自身ではなく、社長が空けた時間。社長の時間単価を計算すると判断が変わる
- 覚えてくれない、辞めてしまうへの対策は、人に貯めずに会社に残す仕組みをつくること
いきなり完璧な体制をつくる必要はありません。まずは電卓を1回叩いて、自分の会社の場合の数字を出してみてください。それだけで、怖さの半分は正体を現します。
よくある質問
Q. 手順書や動画を作る時間がそもそも取れません。
A. 全部を一度に作る必要はありません。いちばん頻度の高い作業を1つだけ、画面を録画しながらいつもどおりやってみてください。3分で1本できます。月に2本ずつでも、1年で24本たまります。
Q. 何ヶ月で戦力になれば合格と考えればいいですか。
A. 業務によりますが、事務職で3ヶ月から6ヶ月が一つの目安です。大事なのは期間の長さより、社長の中で期限を決めておくことです。決めていないと、いつまでも不満だけが残ります。
Q. 正社員とパート、どちらで採用すべきでしょうか。
A. 任せたい仕事が「判断を含むか」で考えてみてください。判断まで任せたいなら正社員、決まった手順を回してもらうならパートで十分です。ここを曖昧にしたまま雇用形態だけ先に決めると、後でお互いに不満が出ます。
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本日のお仕事
本日のコンサルティングにおいて、お金のブロックパズルを教えたら、「こんな指導を待っていた」みたいな一言をいただく。今までのコンサルタントでは全く要領を得ず、正直今回の専門家の訪問もあまり乗り気ではなかったみたい。その不安を払しょくできたのは良かった。
- Q社 研修打ち合わせ
- S社 お金のブロックパズル 活用方法の指導
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