販路開拓の前に「いくら足りないのか」を出していますか

朝でも昼でもこんばんは。〝次世代経営者育成パートナー〟中小企業診断士の田中 健太郎です。

本日は「販路開拓と数字のつなげ方」のお話です。新しい取引先を探すこと自体は、まったく正しい。ただ、現状の数字を握らないまま「とにかく新規開拓だ」と走り出すと、忙しくなるばかりで手元にお金が残らない、ということが本当に起きます。今日は、下請けの町工場を例に、根拠を持った販路開拓のやり方をお話しします。

こんな方におすすめ

  • 特定の取引先に売上を頼っていて、そろそろ新規開拓をしたいと思っている
  • 「販路開拓が大事」と聞くけれど、何から手をつければいいか分からない
  • 売上は増えているのに、なぜか利益や手元資金が増えた実感がない
  • 新しい引き合いに片っ端から応じて、現場が忙しいわりに疲弊している
  • 先代から引き継いだ下請け構造を、自分の代で変えたい後継者・二代目

はじめに

「そろそろ新しい取引先を増やさないと、まずいと思ってるんです」

経営相談で、下請けの社長さんからよく聞く言葉です。気持ちはすごく分かります。1社への依存は怖いですし、販路を広げること自体は経営の王道です。ただ、私が必ず聞き返すことがあります。「では、今いくら足りないんですか?」。ここで数字がスッと出てくる社長さんは、じつはあまり多くないんですね。今日はそのあたりの話です。

なぜ「とりあえず新規開拓」は危ないのか

金属プレス加工のA社(従業員15名・年商2.2億円)は、大手部品メーカーの二次下請けでした。上位1社で売上の4割。社長は「このままでは危ない」と、展示会に出たり、新しい業界に飛び込み営業をかけたりと、精力的に新規開拓を始めました。行動力は素晴らしい。

ところが1年経って、売上は2.2億から2.5億に増えたのに、利益はほとんど変わっていませんでした。なぜだと思いますか? 増えた新規の仕事が、単価の低い小口ばかりだったんです。段取り替えの手間は増え、現場は残業続き。忙しさの割に、粗利はちっとも残らない。「売上が増えたのに、お金が残らない」の典型でした。

これは能力の問題ではありません。「今いくら足りなくて、それをどんな仕事で埋めるべきか」という数字の設計図がないまま走ったから、こうなったんです。販路開拓は、行き先を決めてから走るものなんですね。

根拠ある販路開拓は、3つの数字から始まる

ステップ1 今の粗利を知る(1社あたり・1個あたり)

まずは現状把握です。ここで役に立つのが、お金のブロックパズルという考え方。売上から材料費や外注費などの変動費を引いたものが粗利(限界利益)、そこから人件費や家賃といった固定費を引いた残りが利益です。式にするとこうなります。

粗利 = 売上 −変動費 / 利益 = 粗利 −固定費

A社の場合、上位1社の仕事は粗利率が高く、じつは一番おいしいお客様でした。逆に飛び込んだ新規の小口は粗利率が半分以下。ここを取引先ごと・製品ごとに分けて見ないと、「どの仕事で稼いでいるのか」が見えません。まずは自社の粗利の地図を作るところからです。

ステップ2 いくら足りないかを出す(必要利益と不足額)

次に、目標から逆算して「不足額」を数字にします。A社の固定費は月およそ1,500万円。ここに、借入返済や設備更新、社長の役員報酬まで含めて「最低いくら利益が要るか」を置くと、必要な粗利額が決まります。

計算してみると、A社は年間であと約600万円の粗利が足りない、と分かりました。ここが肝心です。「なんとなく不安だから新規開拓」ではなく、「あと600万円の粗利をどこかで作る」という具体的な的に変わる。的が数字になると、打ち手の良し悪しを判断できるようになります。

ステップ3 その穴を何で埋めるか逆算する(必要受注量)

最後に、その600万円をどんな仕事で埋めるかを逆算します。粗利率の低い小口を粗利1件2万円で埋めようとすると、年間300件。段取りに追われて現場がもちません。一方、A社が本来強い「短納期・小ロットの精密プレス」は1件あたりの粗利が大きく、粗利30万円の仕事なら年間20件で足りる計算でした。

同じ「600万円を埋める」でも、どの客層を狙うかで必要な受注件数はまるで違う。ここまで数字で見えて初めて、「では、どの業界の、どんな困りごとを持つ会社に営業をかけるか」という販路開拓の中身が決まります。これが根拠ある販路開拓です。増やすべきは売上の数字ではなく、粗利の数字なんですね。

実際の改善事例

A社は、まず自社の粗利の地図をエクセルで作り直しました。取引先ごと・製品カテゴリごとに粗利率を出したところ、「手間の割に儲からない仕事」と「本当の稼ぎ頭」がくっきり分かれました。最近はこうした集計をAIに手伝わせると一気に速くなりますし、月次でDX的に更新していけば、判断の鮮度も保てます。

そのうえで、埋めるべき600万円を「粗利の大きい短納期・小ロット案件で20件」と決め、狙う業界を医療機器と試作品の分野に絞りました。むやみに広げず、勝てる土俵に販路を寄せたわけです。結果、翌期は売上こそ微増でしたが、粗利は700万円積み増し、残業は減りました。設備更新には、ものづくり系の補助金が使えないかも並行して検討しています。

社長はこう言っていました。「新規開拓って、数を増やすことだと思っていました。そうじゃなくて、足りない粗利を狙って埋めることだったんですね」。まさに、その通りなんです。

まとめ

今日の話を3つに絞ります。ひとつ、販路開拓は正しい。でも現状の数字を握らずに走ると、忙しいだけで利益が残りません。ふたつ、まず自社の粗利の地図を作り、目標から「いくら足りないか」を数字で出す。みっつ、その不足を、どの客層の何件で埋めるかを逆算してから営業先を決める。

難しく考えなくて大丈夫です。まずは直近1年の取引先を、粗利の大きい順に並べてみる。それだけでも「どこに販路を広げるべきか」の景色が変わります。完璧な分析より、まず一歩。行き先を決めてから、走り出しましょう。

よくある質問

Q. 取引先ごとの粗利なんて、うちのどんぶり勘定では出せません。

A. 最初はざっくりで十分です。売上の大きい上位5社だけ、材料費と外注費を差し引いて粗利率を出してみてください。全部を精密にやるより、上位から手をつけるほうが判断は早く変わります。

Q. 不足額の「必要利益」は、どう決めればいいですか。

A. 借入の年間返済額、来期に必要な設備投資、社長ご自身の適正な役員報酬。この3つを積み上げると、最低限確保したい利益の目安になります。ここから逆算すると必要な粗利額が見えてきます。

Q. 数字が固まるまで、新規営業は止めたほうがいいですか。

A. 止める必要はありません。並行で構いません。ただ「この引き合いは、狙っている粗利の穴を埋める仕事か?」という物差しを1本持つだけで、受ける・断るの判断がぶれなくなります。

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本日は「販路開拓の前に、いくら足りないのかを出していますか」というテーマでブログを作成しました。

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本日のお仕事

今日のブログは実は私が契約に失敗した案件です。販路開拓のみで結論を出してしまったがために、引き続き私にお願いする気にならなかったという話です。実際はきちんと財務諸表をお預かりして、必要な売り上げの根拠などを整理すべきだったのですが、そこを怠ってしまいました。
伴走支援を行う意味でも、きちんと数字を見せていただくのは大事だねっていう話です。

・報告書作成
・DX研修のリハーサル
・経理処理などなど

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